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はくとうのうた
白塔の歌
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页
「この子は、売り物ではございません、預り物でございまして……。」と爺さんは答えました。
そしてその預り物の取引の話が初まったのでありますが、爺さんの語るところでは、少女は一年ほど前、港のほとりをただ一人でさ迷っていたのを、或る船乗りに拾いあげられましたが、その船乗りが大きな貨物船に乗りこんで出かけます折、少女を爺さんに預けたのでありました。ところで、船乗りはそれきり戻って来ませんし、少女はまだ自分の身元を覚えていませんし、爺さんは処置に困りましたが、そのうちには誰かが探しに来るかも知れないと夢のような考えのうちに、港の露天店に毎日連れ歩いてるとのことでありました。
「ですから、私がこの子を探しに来たのですよ。」と陳慧君はいったそうであります。
けれども、この話とても真偽のほどは分りかねますし、とにかく、陳慧君は相当多額の金を爺さんに与えて、少女を引取って来たらしいのであります。その少女が柳秋雲でありまして、秋雲というのは、爺さんか船乗りかがつけた名前なのか或は元来そういう名前だったのか不明ですが、柳という姓は、爺さんの姓を取ったというのが本当らしく思われます。