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はくじつむ

白日夢

豊島 与志雄

「新小説」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,672 字 · 23 页

青空文庫

……そんな風に水掛論に終って、なかなかはてしがつかなかった。そのうち私は変に陰鬱になって、話を中途で切上げて、布団にもぐり込んでしまった。

悪醒めのした酔が、また変に頭に上ってきて、みしりみしりと天井裏を誰かが歩くような、気味悪い遠い頭痛を感じてきた。私はもう何もかも忘れたい気になって、頭痛の音を数えていたが、いつのまにかぐったり疲れて、そのまま眠ってしまった。

翌朝、明け方に一寸眼を覚したが、宿酔めいた灰汁どい気持のうちに、凡てがもやもやと夢のように入乱れた。それからまたうとうとと眠った。

十時頃だったろう、私は妻から呼び起された。

「あなた、羽織を貰ってきましたよ。」

紺のお召の一重羽織を、彼女は笑いながら打振ってみせた。私はむっくり身を起した。

「行ってくれたのか。」

「ええ、行かなけりゃ仕方ないじゃありませんか。あなたが御自分でいらっしゃるわけにはゆかないし、女中をやるわけにもゆかないし、私より外に誰もないじゃありませんか。」

昨夜私が云った通りのことを、平気で自分から繰返してる彼女を、私は妙な気持で眺めてやった。

「行ってみると、案外やさしい気の置けない人達ですよ。