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はくちゅうむ
白昼夢
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,690 字 · 8 页
俺より外の男には心を移さないと誓って呉れ……併し、あの女はどうしても私の頼みを聞いては呉れない。まるで商売人の様な巧みな嬌態で、手練手管で、その場その場をごまかすばかりです。だが、それが、その手練手管が、どんなに私を惹きつけたか……」
誰かが「ようよう、御馳走さまッ」と叫んだ。そして、笑声。
「みなさん」男はそんな半畳などを無視して続けた。「あなた方が、若し私の境遇にあったら一体どうしますか。これが殺さないでいられましょうか!」
「……あの女は耳隠しがよく似合いました。自分で上手に結うのです……鏡台の前に坐っていました。結い上げた所です。綺麗にお化粧した顔が私の方をふり向いて、赤い脣でニッコリ笑いました」
男はここで一つ肩を揺り上げて見えを切った。濃い眉が両方から迫って凄い表情に変った。赤い脣が気味悪くヒン曲った。
「……俺は今だと思った。この好もしい姿を永久に俺のものにして了うのは今だと思った」
「用意していた千枚通しを、あの女の匂やかな襟足へ、力まかせにたたき込んだ。笑顔の消えぬうちに、大きい糸切歯が脣から覗いたまんま……死んで了った」
賑かな広告の楽隊が通り過ぎた。