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はくちゅうむ
白昼夢
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,690 字 · 8 页
一体全体、この男は何を云わんとしているのだ。何とも知れぬ恐怖が、私の心臓を風船玉の様に軽くした。
「……女房の脂ぎった白い胴体や手足が、可愛い蝋細工になって了った」
「ハハハハハ、お極りを云ってらあ。お前それを、昨日から何度おさらいするんだい」誰かが不作法に怒鳴った。
「オイ、諸君」男の調子がいきなり大声に変った。「俺がこれ程云うのが分らんのか。君達は、俺の女房は家出をした家出をしたと信じ切っているだろう。ところがな、オイ、よく聞け、あの女はこの俺が殺したんだよ。どうだ、びっくりしたか。ワハハハハハハ」
……断切った様に笑声がやんだかと思うと、一瞬間に元の生真面目な顔が戻って来た。男は又囁き声で始めた。
「それでもう、女はほんとうに私のものになり切って了ったのです。ちっとも心配はいらないのです。キッスのしたい時にキッスが出来ます。抱き締めたい時には抱きしめることも出来ます。私はもう、これで本望ですよ」
「……だがね、用心しないと危い。私は人殺しなんだからね。いつ巡査に見つかるかしれない。そこで、俺はうまいことを考えてあったのだよ。隠し場所をね。……巡査だろうが刑事だろうが、こいつにはお気がつくまい。