轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はくもくれん
白木蓮
豊島 与志雄
「芸術」1947(昭和22)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 24 页
喜美子は私の前で、何のはにかみもなく三味線を手に取ることもあった。技倆はまだ進んではいないが、覚えたものは確実に自分のものとしてるところがある。私の知ってる限りでは、彼女は「小鍛冶」が好きだ。「稲荷山三つの灯し火明らかに心をみがく鍛冶の道…」のその最初から、彼女の明るい顔は白皙とも言えるほどに澄んでくる。それから、剣を鍛える槌の音と麻衣を打つ砧の音と交錯するあたり、彼女の撥音は鮮かに冴えてくる。――そのように私が感ずるのも、酔い痴れた悲痛な心情から、小狐丸の名剣などに憧れる故であろうか。それとも、一片の清純な愛情を喜美子に寄せてる故であろうか。それはとにかく、喜美子は、喫茶店カツミの濁った空気にはふさわしくなかったし、また、加津美の遊蕩な空気にはふさわしくないのだ。
加津美のある一区域の外には、戦災による焼け跡が見渡す限り拡がっている。終戦後まだ一年半あまりで、電車通りなどにはぽつぽつ小さな家が建ってはいるが、だいたい原っぱだ。あちこちに瓦礫の堆積があり、いら草の茂みが冬枯れのままに残り、小さく区切った耕作地には、麦が伸びあがり蚕豆の花が咲きだしている。