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しろばなのあさがお

白花の朝顔

泉 鏡花

「週刊朝日 第二十一ノ十六号(春季特別號)」1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,880 字 · 62 页

青空文庫

ここの合方は、あらゆる浄瑠璃、勝手次第という処を、囃子に合わせて謡が聞える。

使は来たり馬    に鞍、鞍馬の山のうず桜……

「牛若の仮装ででも出ますかね、私は大の贔屓です。」

恥ずべし、恥ずべし。……式亭三馬嘲る処の、聾桟敷のとんちきを顕わすと、

「路之助はんが、出やはるやろ。」

お絹の方が知っている。ただしこの様子では、胸も痛めず、怪我はしない。

しゃり、り、揚幕。艶麗にあらわれた、大どよみの掛声に路之助扮した処の京の芸妓が、襟裏のあかいがやや露呈なばかり、髪容着つけ万端。無論友染の緋桜縮緬。思いなしか、顔のこしらえまで、――傍にならんだのとそっくりなのに、聾桟敷一驚を吃する処に、一度姿を消した舞妓が一人、小走りに駆け戻るのと、花道の、七三とかいうあたりで、ひったり出会う。何でもお客が大変待あぐんで機嫌が悪い、急いで迎いに、というのです。

路之助の姉芸妓が、おおしんど、か何かで、肩へ色気を見せたのですが、

「えろう遅うなって、ご苦労え、あのな、ついそこで、いえ、あのな、むこうへ、……境はん。」

おや。

「あんたも知ってやろ。境はんが来やはって、逢いとう逢いとうていた処やろ、それやよって。