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しろばなのあさがお
白花の朝顔
泉 鏡花
「週刊朝日 第二十一ノ十六号(春季特別號)」1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,880 字 · 62 页
「あんたはんまで、そない言わはる、口惜いえ。」
「が、しかし、つらいでしょう。」
莨を捨てて硝子盃を取って、
「そんな時は、これに限る。熱燗をぐっと引っかけて、その勢いで寝るんですな。ナイフの一挺なんざ、太神楽だ。小手しらべの一曲さ。さあ、一つ。」
「やどへ行て。」
「成程。」
「あんたはん、のましてくりゃはりますか。」
「飲ませますとも。」
「嬉しいな、段で、抱いてくれやはった時から、あんたはんは生命の親どす。」
真顔で、こうまでいわれたのには、酒が支えた。胸の澄まない事がいくらある……
「お言で痛み入る。」
と、もう一息ぐっと呷って、
「――実は串戯だけれどもね、うっかり、人を信じて、生命の親などと思っては不可せん。人間は外面に出さないで、どういう不了簡を持っていないとも限りません。
こういう私ですがね、笑い事じゃあるけれども、夢で般若が追廻すどころか、口で、というと、大層口説でもうまそうだ。そうじゃない、心で、お絹さんを……」
「私をえ?」
「幽霊にしましたよ。ご免なさいよ。殺した事があるんだから。」
「あんたはんがな。」
前髪がふっくり揺れて…差俯向く。
「本望どすな。