轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しらふじ
白藤
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,822 字 · 16 页
生死一如の境地では、死もまた一つの旅と観ぜられたのだ。
俺のちっぽけなばかばかしい旅は、敗戦と共に終った。それからは家畜のような生活をして、家畜のように帰宅してきた。惨めだという一語にすべてが尽きる。愛国心の乏しさを自分のうちに見出した俺は、敗戦などを苦にはしなかった。ただ、人間として、人間としての感情から、自分自身がまた凡てが惨めだった。
この打ち萎れた気持ちの中で、白藤の家の心像が、汽車の窓から見た聊かの風景を機縁に、俺のうちに植えつけられたのだ。そして俺はしばしば過去に引き戻された。俺はあの時、またあの時、更にあの時にも……彼女に愛を語ることが出来た筈だった。彼女も俺に愛を語ることが出来た筈だった。俺も彼女もそれを待望していたのかも知れなかった。然し二人ともそれをしなかった。俺の応召や彼女の病気がそれを妨げたのではなかった。それは却って愛を語る口火とさえなるものであった。俺たちが愛を語らなかったのは、ただ、余りに親しく愛しすぎていたからであったろう。少くとも俺の方は、余りに親しく彼女を愛しすぎていた。余りに親しく愛しすぎて、却って彼女を忘れていた。