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しろへびのし

白蛇の死

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,881 字 · 24 页

青空文庫

――大丈夫よ。まさか親分だって、そんなに女房を疑っちゃ、お爺さんの癖に外聞が悪いもの。かまうもんか、知れたら知れた時の事さ」

妖婦気取りのお由は、国太郎にぴったり寄添いながら非常に嬉しそうであった。そして散々この気の弱い青年をいじめぬいて、少しも側から離そうとはしなかったが、つい先刻になって不図気が変ってしまった。

「矢っ張り私、帰った方が好いわ。あんた怒りゃしないわね。又来るには泊らない方が出好いもの、ね」

「だってもう十二時過ぎだぜ」

「怖かあないわ。こう見えたって白蛇のお由さんだもの。夜道なんか平気よ」

「じゃ、其処まで送って行こう」

「無論だわよ」

お由はまだ国太郎に絡み纏りながら、裏梯子から表へ出た。が、塀を一つ曲って此処まで来ると、

「あら、私紙入れを置いて来ちゃった。ほら、先刻帯を解いた時、一寸本箱の上へ置いたのよ。あんたが悪いんだから、いそいで取って来てよ」

お由は国太郎の胸を肩で小突いて、二人の時だけに見せる淫蕩な笑いを顔一杯に浮べていた。その濃艶な表情が、まだはっきりと国太郎の眼に残っているのに――

すぐに紙入れを取って引返して来た時には、もうお由は此処に仆れていたのであった。