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しろへびのし
白蛇の死
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,881 字 · 24 页
「じゃ、いいかい」
言葉少なに技手はこう言って、無雑作にお由の頭を抱きあげた。国太郎は夢中で足の方を持ったが、どっしりと重い死人の体は思ったより遥かに扱い難く、物の十間と歩かぬ中にもう息切がして来た。そして揺りあげる度にしどけなく裾が乱れて、お由好みの緋縮緬がだらりと地へ垂れ下る。その度に彼等は立止って、そのむっちりと張切った白い太股のあたりを掻き合せてやらねばならなかった。
「これじゃ遣り切れ無い、両方から腕を担いで見ようよ」
然し何うして見たところで硬張った死人を運ぶのは可成りの重荷であったが、他に工夫のしようもなかったのでその儘歩き続けた。この露路をぬけてドンドン橋を渡ると瓦斯会社の横に出る。それを真直ぐに、左手は深い小川をへだてて墓地、右手は石炭置場になっている暗い道を、何うにか大河畔まで忍んで行った。そこを左に折れて河添いに一丁ほど歩くと又左に折れて、間もなく百坪ばかりの空地へ出る。空地の中央には何んとかいう小さな淫祠が祀ってあるが、その後の闇の中へお由の屍体を下して、二人は初めてほっとした。
幸い途中で誰にも見られなかった事は、彼等にとって何よりであった。