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しろあり

白蟻

小栗 虫太郎

在线阅读小栗 虫太郎《白蟻(しろあり)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,099 字 · 106 页

青空文庫

すると、その茫漠とした意識の中から、なんとなく氷でも踏んでいるかのような、鬱然とした危懼が現われてきた。と云うのは、最初に高代という言葉を聴いたのは、まだ十四郎が意識のはっきりせぬ頃の事であり、その後に時江が耳にしたのも、御霊所の中であって、やはり十四郎は、同じ迷濛状態にあったのではないか。それは、たしかに一脈の驚駭だった。そうして、滝人の手は、怯やかされるまま、御霊所の扉に引き摺られていったのである。

扉を開くと滝人の鼻には、妙にひしむような、闇の香りに混じって、黴臭い、紙の匂いが触れてきた。彼女は入口にしばらく佇んでいたが、気づいて、頭上の桟窓をずらせた。すると、乳色をした清々しい光線が差し込んでき、その反映で、闇の中から、梁も壁も、妙に白ちゃけた色で現われてきて、その横側がまた、艶々と黝ずんで光っているのだった。眼の前には、二本の柱で区画された一段高い内陣があって、見ていると、その闇が、しだいにせり上がって行くかと思われるほど、框は一面に、真白な月光を浴びていた。またその奥には、さまざまな形をした神鏡が、幾つとなく、気味悪い眼球のように閃いているが、背後の鴨居には、祝詞を書きつらねた覚え紙が、隙間なく貼り付けられていて、なかには莫大な、信徒の寄進高を記したものなどもあった。