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しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
在线阅读小栗 虫太郎《白蟻(しろあり)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,099 字 · 106 页
頭上に骨っぽい峰が月光を浴びて、それが白衣を着た巨人のように見え、そのはるか下に、真黒な梢を浮き上がらせている樅の大樹は、その巨人が引っさげている、鋭い穂槍のように思えた。それは、頭の病的なときに見る夢のようであって、ともすると、現実に引き入れたくなるような奇怪な場面であった。しかし、それから母屋のなかに入り、その光景を桟窓越しに眺めている滝人には、いささかもそうした物凄い遊戯が感じられず、まったくその数瞬間は、緊張とも亢奮とも、なんともつかぬ不安の極点にあった。ところで、滝人が最初目した、十四郎の居間付近について、やや図解的な記述が必要であると思う。その寝間というのは、蚕室の土間の階段を上った右側にあって、前の廊下には、雨戸の上が横に開閉する、桟窓があった。そして、廊下から以前の階段を下った所は、大部分を枯草小屋が占めているので、自然土間が鍵形になり、一方は扉口に、もう一つのやや広い方は、階段と向き合った蚕室に続いていて、そこにも幅広い、手縁りをつけた階段があり、その上方が蚕室になっていた。しかし、その二つの階段は、向き合っているとはいえ、蚕室の方は、両側に手縁があるだけ……壁に寄った方の手縁の端から直線を引いてみると、それが向う側では、階の中央辺に当るのだった。