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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

霰の音か。否々。馬の蹄の音だ。何という高い蹄の音であろう。何という疾い馬であろう。あれ、王宮の周囲を街伝いに、もう一度廻ってしまった。あの馬の騎り手はこの夜更けに何のためにこの王宮のまわりを駈けめぐるのであろう。あんな疾い馬がこの世に在るか知らん。騎り人は俺の知らぬ魔者ではないか知らん。あれ、最早二度まわってしまった。今度は三度目だ。これ、白銀の鏡。赤鸚鵡。美留藻の行衛は最早見なくともよい。それよりも早くあの馬と、その騎り人を見せてくれ。あれ、もう三度まわった。疾い疾い。何者だ。何者だ」

と呼吸は機ませて尋ねました。この言葉の終らぬうちに、早くも赤鸚鵡の眼から電光のように光りがさして、鏡の表面が颯と緑色に曇って来ました。そうして又ギラリと晴れ渡ったと思うと、一人の騎馬の少年の姿が現われました。それは最前王宮を出て行った紅矢でした。

紅矢は今まで親よりも敬って、兄弟よりも親しく思っていた藍丸王が、まるで鬼よりも無慈悲な心になり、虎よりも荒々しい声に変って、その上に今は又、自分の妹の事を露程も思って下さらない事がわかりますと、あまりの事に驚き悲しんで狂気のようになって王宮を駈け出ると直ぐ、そこに繋いでおいたこの国第一の名馬「瞬」