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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
最前馬から落ちて顔に怪我をした上に、大切な着物を汚してしまったのだが、明日は又王宮に行かねばならぬから、今日の正午迄に今一着同じ服と、外套一枚を仕立て上げろ。但し材料や飾りは出来るだけ派手な上等のものにして、鈕にはこれを附けるようにと云いながら、髪毛の中から大粒の金剛石を十二三粒取り出して渡しました。
折よくこの仕立屋の亭主は紅矢の家へ出入りの者で、紅矢の身体の寸法を心得ていて、委細承知致しましたと受け合って、金剛石を受け取りましたから、美留藻はなおも念を押して、家中総掛りで屹度間に合わせろと命じて、又馬を飛ばせました。それから帽子屋へ参りまして上等の帽子を、矢張り正午迄の約束で誂えまして、その飾りにと云って、ここへも大きな金剛石を一粒渡しました。それから剣屋へ行って剣を、靴屋へ行って靴を、手袋屋へ行って手袋を、皆正午までに最上等の分を調えておくように申し付けまして、今度は王城の西の方に向って馬を飛ばせました。どこへ行くのかと思うと、やがて美留藻は紅矢の家を尋ね当てまして、大胆にも表門から駈け込みましたが、馬から降りると直ぐに玄関に駈け寄って、その石段の上に伏し倒れて、悲し気な声で家の者を呼びました。