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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

そうしてその夜は夜通し囈言ばかり云っていましたが、時々眼を開いて両親や妹共の顔を見るかと思うと、忽ち狂気のように騒ぎ出しまして――

「この室へ這入っちゃいけない……お父様も……お母様も妹共も……家来共も皆いけない。聞け……聞け……私は悪魔に咀われている。悪魔の果物。悪魔の美紅。そうして悪魔の『瞬』……七ツの果物は悪魔の数であった。……私は七ツの数に咀われた。悪魔の美紅に欺された。悪魔の『瞬』に踏み蹂られた。吁恐ろしい。……嗚呼苦しい。お父様……お母様……妹共……危い危い。私の傍に居ると危い。悪魔は娘の美紅に化けている。そうしてあの悪魔の乗り移った『瞬』に乗って今にもこの窓から駈け込んで来たら……危い危い。出て行って下さい。妹共、出て行け。一人も私の傍へ居ちゃいけない。早く早く」

と叫ぶかと思うと、又ガックリと枕に頭をのせて、うとうと睡ってしまいました。こんな事が夜通しに二三度もありましたが、傍に居る人々は何の事やら訳が解からずに、唯驚き慌てるばかりでした。そうして何は兎もあれ用心のために、お母様や妹共をこの室から遠ざけまして、お父さんとその他にも一人、気の強い、力も強い家来の黒牛という者と二人で枕元に居る事にしまして、一方は、廏屋の馬丁に申しつけて、『瞬』