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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

その役人共は青眼先生が眼を覚ますのを見るや否や、皆一時に手を挙げ頭を下げて――

「総理大臣公爵青眼閣下。御祝いを申し上げます」

と口々に申しました。これを見た先生は呆気に取られてしまって、どこからが夢で又どこからが本当なのか、いくら考えてもわかりませんでした。そうしてこれはあまりいろいろの心配をするために、気持ちが変になっているのではあるまいかと思いました。けれども斯様に役人が大勢集まって、口々にお祝いの言葉を云うところを見ると、自分がこの国の総理大臣になった事だけは、どう考えても本当で、疑う事が出来ませんでした。

二十五 止まらぬ花馬車

一方、気が狂った紅木大臣は、濃紅姫の死骸を荷いだまま、一息に廊下をかけ抜けて、馬にも乗らず真一文字に、自分の家に帰り着きました。そうして門を這入るや否や、玄関の横に置いてあった昨日の花馬車の中に、濃紅姫の死骸を外套に包んだまま放り込んで、それから廏へ行って名馬の「瞬」を引き出して、自身に馬車に結び付けると、いきなり鞭をふり上げて――

「もとの世界へ帰れ」

と叫びながら、尻ペタを千切れる程殴り付けました。

馬は驚いて棹立ちになって、驀然に表門を駈け出しますと、丁度そこへ王宮から、紅木大臣を追っかけて来た兵隊が往来一パイになって押し寄せて、一度に鬨と鯨波を挙げました