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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

「奴れ小娘、覚悟をしろ。こんな悪戯をして俺の大切な役目を破ったからには生かしておく事は出来ないぞ。どうするか見ておれ」

と大きな声で怒鳴りながら、忽ち鬼のような顔になって袋も何も打っ棄って、あと引かえして追っかけて来た。

美留女姫は二度吃驚。もう銀杏の葉の字を読むどころの沙汰ではない。慌てて逃げ出して、後から来た白髪小僧の袖に縋って――

「あれ、助けて頂戴。白髪小僧さん。助けて頂戴。あのお爺様に殺されます。妾を助けて頂戴。連れて逃げて頂戴。早く。早く」

と云いながら、もう先へ立って駈け出した。この様子を見たお爺さんは益々腹を立てて真赤になって、

「奴れ悪魔の娘、逃げようとて逃がすものか。空の涯までも追っかけて引っ捕えてくれる。引っ捕えたら生かしてはおかないぞ。あとから行く白髪の男、貴様も待て。二人共悪魔であろう。国を乱す悪魔であろう。石神の文を読んだからには悪魔の片われに違いない。逃がす事は出来ないぞ。生かしておく事は出来ないぞ」

と大きな声で喚きながら追っかけた。

ところがこの時白髪小僧は、美留女姫に誘われて一所にあとから逃げながら、このお爺さんの喚めき声を聞き付けて不図うしろをふり返ると、その顔を一目見るや否や、お爺さんは又もや腰の抜ける程驚いた様子で――