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ゆりのはな

百合の花

小川 未明

「趣味」1906(明治39)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,179 字 · 9 页

青空文庫

」

「お花ちゃんは、萩原のお婆さん見たかい。」

「ああ見た、大そう怒っててよ。」

「怒っていたかい?」

「太郎さんを探していたわ。」

「萩原の梅干婆なんか、誰が怖れるもんだ。」太郎は口ではそういいましたものの、家へ帰ることも出来んで困っていました。

「あ、太郎さん御覧、この清水の中にあんな光ったものがあってよ。」

「なんだろう、僕が取って上げよう。」と太郎は水の中に手を浸しますと底は浅いから直ぐ手は届きましたが、いくら掬って見ても光るものに当りません。手を入れると水は濁る、しばらくすると又澄んでもとのように光るものが見えるのであります。

その中に花ちゃんも手を入れて、二人が掻き廻しましたけれども遂に取ることが出来ませんでした。

「なんでしょうね、太郎さん。」

「なんだろう、お花ちゃん。」

「妾は焦ったくなってよ。」

「ええ、この独楽を投げてやれ!」と太郎は独楽を清水に投げ込みました。しますると忽ちそこに美しい五色の糸でかがった手毬が三つ浮んだのであります。花ちゃんは喜んで拾い上げて、

「まあ、美しい手毬だことねえ、太郎さん妾にお呉れでないの。」

「みんな上げるよ。僕の独楽はどこへ行ったろうか。