轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
冬はなるべく温い土地で暮したいと思うがまだ別荘を持つまでに至らない、熱海と云う所は昔から好きな所であった、今から三十年ばかり前に逗留保養したことまである温泉だが、大震災以後土地の気分がこわれた上に鉄道が開通し自動車の世の中になってからは町全体が昔の様な潤いが欠けてしまった感じがする。
しかし避寒を兼ねての東京へ一番近い養生地と云えばこの地に越した所はないので弥之助は冬はしばしば此処へやって来る。
今日もまた海岸の中流処の宿屋に陣取って二日ばかり保養した、海岸は波の音がよもすがらやかましいけれど、此所には「河原の湯」と云う名湯がある、弥之助はこの湯が好きなので宿の内湯等は二の次にして此所であたたまる事を楽しんで居た、河原の湯は昔とは違って改造され、一浴五銭ずつ取って大きな共同風呂になって居る、その熱度と新鮮味とが他の何所の湯よりも肌に爽である。
弥之助は此所で二日ばかり保養した後、東京へ取って返した。枝付きの蜜柑を買い込んで土産とし、三等客として空席の一つを占めたが向合いに黒いとんび外套を着た相当品格のあるお爺さんが一人居た、汽車が小田原を過ぎた時分にこのお爺さんは首を伸ばして、