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ひゃくしょうやのすけのはなし

百姓弥之助の話

中里 介山

01 第一冊 植民地の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页

青空文庫

程なく同氏から鄭重な小包郵便を以て二着の「モンペ」が送られた、それに添えられた手紙には、当地織物会社の特産、ステーブルファイバーを以て仕立せさせた「モンペ」を送ると、モンペとしてはステーブルファイバーでは地方色の趣味が没却される点もあるが然し時節柄の意味に於て国産ステーブルファイバーを以て試製させて見た。別に地方色豊かなるものとしては会津地方から取寄せて送るという様な親切をきわめたものである。

弥之助は大島氏の好意に感謝しつつ早速この国産ステーブルファイバーを着用に及んだ。ステーブルファイバーは一見したところモンペとしてはきゃしゃに過ぐるようで立居の荒い弥之助に取っては持ちの方がどうかしらと心配したが見かけによらず丈夫なもので中々裂けたりやぶれたりしない、さて穿き心の方はどうかというとこれは普通の袴と違って裾が締って居るから階子段の登下りにしろ菜園への出入にしろ少しも衣裳が邪魔にならない、その上保温力が大したもので、あれをはいて居ると下腹部から下の温みが着物一枚どころではない、万事につけて耕書堂生活にはぴったりとした着用物である。自分の予想が当った事を非常に喜んで弥之助はこれを塾中の若い者にはかせる事にし、大島氏の送られた型によって近所の呉服屋へ注文して更に木綿製五着を作らせた。