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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
「年とりの豆まきの豆迄こうして袋に入れて三越で売る様になった」
と弥之助の母などは三越の屋上庭園に大豆畑でも出来たほどに驚歎して居る。
十六
二月末の或日の事、五の神の力さんが小風呂敷に包んだものを持って来て、
「これは一等賞を取った薩摩薯だ、一つ食べて見てもらい度い」
と云った。
「それは好いところだ、何か食べ度いと思って居たところだ、なまかね、ふかしたのかね」
と弥之助が尋ねると、力さんが、
「今ふかしたてだよ」と云った。
弥之助はその小風呂敷を受け取って包を解いて小さいのを三本若い者に分けてやり自分はその大きいのを受け取って皮をむいて食べながら力さんと話した。
「なる程これはうまい、甘薯のうまいのは、ほくほくして栗の味がする、この間のおいらんとは全く別な味だ、これは何という種類です」
力さんが答えていう。
「これは紅赤というので、元は川越種です、埼玉県から来たものです、ずっと前に埼玉から熱心家が来てこのさつま薯の種や、それから丈が短くて穂の大きい麦種をこっちの方へ流行らせたが、この人は毎年麦を 天皇陛下に納める役を仰せつかって居る」
という様な事を話して、