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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
ことに夕方が一番はしゃぐ様だ、猫のじゃれるのとちょっかいを見て居ると如何にも可笑しい、これは本能的の躍動だが、かくれん坊するのを見て居るとどうも少し意識的にやる様だ、一つが障子の外へ飛び出してじゃれて居ると一つがこちらの柱の陰にかくれて待ちかまえて居る、そうすると前に飛び出したのがまた戻って来る、その出合頭にバーッと云う様な様子で左足のチョッカイでおどりかかるところなどは人間の子供の遊びと少しもかわらない。
食事の時などは膳へたかったり、うろつきまわってうるさい、追い飛ばしたってどうにもならない、そう云う時は断然桶伏の刑に処するのである。桶伏と云うのは二ツをまとめて有合せの笊をかぶせその上へ重しの本をのせて置く、最初のうちはザルをがりがりかいたり敷物をむしったりしてミューミュー鳴くが、暫くすると観念して静まってしまう。やがてこっちが食事がすんで解放してやると、大てい二ツが重なりあってチョコナンとして居る。
猫にあてがう食事としてはこちらの飯を分けてけずり節を少しかけてやる程度だが、魚類があれば少し分けてやる、生がかったメザシよりは干物の方を好んで食う、またあんパンなんどをつまんでやると飯よりはかえってよろこんで食う、いまの処肴よりはかえってパンが好きらしい。