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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
と閑山先生が、その来歴を話した。
百姓弥之助は、それを聞いて、成程と思った、そうして、その日の帰りがけに、その村の小学校をたずねると、丁度校長さんがいたから、弥之助は立止まって、少々立話をした末に、それとなく斯ういう事を忠告した。
「長者を尊敬する風習はよく児童等に教えて置きたいものです、昔、江州の小川村へ行くと、藤樹先生をたずねて来る他郷の人の為に、村人は、わざわざ衣服を改めて案内したそうですが、郷党にはその位の気風があって宜しいです、閑山先生は聞えたる老詩人です、それを子供までがああして呼捨てにしている、無邪気といえば無邪気だが、他郷の人が聞くと非常に聞き苦しいです、あれは学校から一応注意してやっていただきたいものです」
校長さんは、よくその忠告を諒として、相当教化につとめることを答えたが、その後、たずねて行って見ると著しく、その無作法が無くなっていた。
二十三
この村に電燈が点いたのはいつ頃の事であったか知らん、何でも弥之助が東京に出た時分で、明治三十年代の事であったと思う。農家へ電燈が点いてその下で藁打ち草履こしらえをやって居ると云って田舎も中々贅沢になったと笑ったものだが、東京の市中に於ても電燈というものが早くから点けられてはいたけれども、最初のうちはそれは非常に料金が高く各家各室へ