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ひゃくしょうやのすけのはなし

百姓弥之助の話

中里 介山

01 第一冊 植民地の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页

青空文庫

これも常に備へられてあるべきだ。

今日の農業の如く、志願主義――志望主義では面白くない。

百姓弥之助も以前からこれと同様の事を考えて居た。

いつかこれを最も組織的に「徴農論」という一書を書いて見たいと思って居たのである。弥之助の考うる所では、世界の本当の平和というものは皆農基本から出直さなければ到底実現されるものではない。国民に徴兵制度を布くように、農はただ国民だけではない、広く人類一般にこれを施行する事に依って初めて人類が生活の真正の安定心を得る事が出来、国際的摩擦というものが、そこから緩和もされ解消もされるのである。

即ち人間の経済生活を貿易本位から生産本位に引き直すのである。そうして生産本位を農業に限定するのである。この主義は今迄の経済学と生活法則とを根本から革新する最も徹底した着実の方案で、戦争の絶滅、国際関係の破局を救う可き最後の最善の断案だと弥之助は信じて居る。それは人類を原始生活に押し戻すという消極的の夢想ではなく、最も原始的根本的であると共に、あらゆるリベラリズムも、ソシアリズムも皆卒業した後の断案であると、弥之助は信じて居る。処がこれと略々同意見をこういう思いがけない、失礼ながらペラペラ雑誌の紙面で発見しようとは案外であった、弥之助は取りあえずその雑誌社へ向けて次のような葉書を書いた。