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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
つぶしに売ることをしないで別に種とりをやり、子を産ませると、その方が利益になる、ここの本村では全国的には豚の飼養が優秀なものだそうであって他府県へも輸出されるとの事だ。
ここから三里離れた飛行場で有名な立川には岩崎家の子安養豚所がある、これは飛行場よりは寧ろ草分なのであるが、さすがに岩崎家のものだけに全国一とか東洋一とかいうもので、ここには西洋から、一頭何千円もする種類の種豚が沢山に集められてある、弥之助も一度これを参観したことがある、所では快く場内を見せて呉れたが、ここの種豚の合格品は非常に高価で売買されるが、その不合格品でさえ一頭数十円で希望者に応じきれない、普通この辺の農家でたちのいいのでも豚コロは五円内外に過ぎないが、岩崎のは不合格品で、四十円もすることになっている。
豚という奴は食う為に生きていて、食われる為に死んで行くように出来ている。廃物でも腐敗物でもこれでイヤと云うことを云わない、フーフー吹いて貪り食う有様は寧ろ痛快と云いたい位である、この豚でさえ、仕つけると相当の礼儀作法は覚える。
子馬も一頭奥州から買入れて飼養したけれど、手数が煩わしいので売り払ってしまった。