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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页
三
「どんなことがあってもへえ怒るじゃあねえ、仮に誰かがおめえをぶっくらわすとすべえ、なんにもしねえによ、いきなりぶっくらわされるだあ、そんなときでも怒っちゃあなんねえ、家へ帰って三日がまんするだあ、いいだな、三日、……それでもまだ肚がおさまらねえだら、三十日がまんするだあ、三十日して肚がいえねえだら三月よ、それから三年までがまんしてみて、それでもまだ承知できねえときは、……そんときはゆくがいいだ、そのぶっくらわした者のとけへよ、なあ、そいつのとけへいってきくだあ、どうしてあのときおらをぶっくらわしたか、その魂胆がききてえってよ、おらが証人、それでてえげえのこたあ、おさまるだあよ」
三
なにごとにもがまん、せくな騒ぐな、じたばたするなという。三日、三十日、三月、三年。ここでもまた「参」つなぎの処世訓を骨の髄まで敲きこまれたのであった。
雪海和尚の養育法による効果であるか、それとも又四郎自身にそういう素質があったものか、やがて彼には「百足ちがい」という定評がつけられた。世間でよく、ひと足ちがいだったねえ、などということを云うが、それが彼のばあいはいつも「百足ちがう」