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ひゃくあしちがい

百足ちがい

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页

青空文庫

ないだろう」

甚だ心ぼそい挨拶で、梅永老職にすればそんなことはどっちでもいいじゃないかというわけらしい。

――これは驚いた、せっかく勘調所の司書までこぎつけたのに、また新規蒔きなおしとは驚いた。

又四郎はここでもういちど雪海和尚を怨めしく思い、「参」つなぎの処世訓に疑惧の念をいだいて、独りこう呟いたくらいであった。

「――ことによるとあれは、単におせっかいな坊主だったのかしれない」

ところが唯一人、五正家のみつ枝嬢だけは意見が違っていた。彼女は歓びの余り昂奮し、母と自分の心づくしであるといって、尾頭付きの膳に酒を添えて祝って呉れた。

「いよいよ御出世の時がまいりましたわね、御用係といえば殿さまのお側勤めでしょ、きっとすぐお眼にとまって、大事な役を仰付けられるにきまっていますわ」

「あなたはなにもご存じないのです」彼はこういいかけた、しかし弁解してもむだだと思い、溜息をついていった、「――しかし、まあとにかく、それはそれとして、私はこの秋には、国許へ帰れると思っていたんですがね」

「あらどうしてですの」

「――どうしてって、……だってこの秋で、勤番の期限が、私は切れるんですから」