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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页
某年某月某日。城中詰の間において、支配役その他の同席するにも拘らず、「無能も秋成くらいになると扶持ぬすみに近いですな」と放言し、同席者と共に大いに哄笑せし事。
四、苅賀由平二 鉄炮足軽組頭
某年某月某日。大手門外において、余の頭上に蝗をとまらせ、「ほれ見ろ、こうしてもこの人は怒らない」と組下の者共に云い、さらに該蝗を余の衿首の中へ入れて、「こうしたって怒らない」と者共を振返り、「だがこれは忍耐づよいのではなくずつなしというものである、おまえたちも決してこうなってはいけない、わかったな」こう云って余を教誨の実物見本にせし事。
五、乙原丙午 御厩奉行二男
某年某月某夜。老職鹿野寧斎殿、新宅祝いの宴席において、丙午は余の膳部より「百足ちがいに鯛などは贅沢だ」と称して焼鯛を横領、之が代りにごぼうを入れ「これでよく似合う」とそらうそぶきし事。
右の如くであった。
以上のほかにも十数件あるが、三年以上がまんして、どうしても肚に据えかねたのが右の五つだった。しかも今や雪海和尚はいない、和尚はええへへへんと云ってこの世を去った。もはや又四郎は自由である。
「ひとつ簡野から、うう、始めてやろう」