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とうなん
盗難
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年5月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,320 字 · 25 页
そりゃ、こういう事にかけちゃとてもすごい腕前ですからね。で、この三千円がおとりになる訳です。主任はそれを現金のまま備えつけの小型金庫の中へ入れておいて、信者の来る度に、
「御奇特なことです。だれだれさんは、もうこの通り大枚の寄進につかれて居ります」
などと見せびらかし、同時に例のまことしやかな夢のお告げを用いるものですから、たれしも断り切れなくって、応分の寄附をする。中には虎の子の貯金をはたいて信仰ぶりを見せる連中もあるという訳で、見る見る寄附金の高は増して行くのでした。考えて見るとあんな楽な商売はありませんね。十日ばかりの間に五千円も集りましたからね。この分で行けば、一月もたたない内に予定の増築費は訳もなく手に入れることが出来るだろうと、主任はもうほくほくものなんです。
ところがね、大変なことが起ったのです。ある日のこと、主任にあてて実に妙な手紙が舞込んだじゃありませんか。あなた方のお書きになる小説の方では、一向珍しくもないことでしょうが、実際にあんな手紙が来ては一寸面くらいますよ。その文面はね「今夜十二時の時計を合図に貴殿の手許に集っている寄附金を頂戴に推参する。