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とうなん
盗難
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年5月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,320 字 · 25 页
さて、その晩です。いつもなら、夜の説教でもない限り、もう九時頃になると寝て了うのですが、今夜はなんだか気になって寝る訳にも行きません。私は巡査との約束もあったので、お茶とお菓子の用意をさせて、奥の一間で――それが信者との応接間だったのです――そこの机の前に坐って、じっと十二時になるのをまっていました。妙なもので、床の間においてある金庫から眼が離せない様な気がするのです。そうしている内にすうっと中の金丈けが消えて行きやしないかなんて思われましてね。
それでも多少心配になるかして、主任も時々その部屋へやって来て、私に世間話しなどしかけました。何だか馬鹿に夜が長い様に思いました。やがて、十二時近くになると、感心に約束をたがえないで、昼間の巡査がやって来ました。そこで早速奥に上ってもらって、金庫の前で主任と巡査と私と三人が車座になってお茶を飲みながら番をすることにしました。いや番をする積でいたのは、多分私だけだったかも知れません。主任も巡査も、昼間の手紙のことなんかてんで問題にしていないのです。おまわりさん仲々議論家で、主任をつかまえて盛んに宗教論を戦わせている。