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ねむいまち

眠い町

小川 未明

「日本少年」1914(大正3)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,518 字 · 7 页

青空文庫

それを見ると気の毒になりましたから、彼は、ごくすこしばかりの砂を監督人の体にまきかけました。と、監督は、たちまちの間に眠気をもよおし、

「さあ、みんなも、ちっと休むだ。」

といって、彼は、そこにある帽子を頭に当てて日の光をさえぎりながら、ぐうぐうと寝こんでしまいました。

ケーは、汽車に乗ったり、汽船に乗ったり、また鉄工場にいったりして、この砂をいたるところでまきましたから、とうとう砂はなくなってしまいました。

「この砂がなくなったら、ふたたびこの眠い町に帰ってこい。すると、この国の皇子にしてやる。」

と、じいさんのいった言葉を思い出し、少年は、じいさんにあおうと思って、「眠い町」に旅出をしました。

幾日かの後「眠い町」にきました。けれども、いつのまにか昔見たような灰色の建物は跡形もありませんでした。のみならず、そこには大きな建物が並んで、烟が空にみなぎっているばかりでなく、鉄工場からは響きが起こってきて、電線はくもの巣のように張られ、電車は市中を縦横に走っていました。

この有り様を見ると、あまりの驚きに、少年は声をたてることもできず、驚きの眼をみはって、いっしょうけんめいにその光景を見守っていました。