轻松读懂日语经典作品
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やのしのとい
矢押の樋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,468 字 · 29 页
……それでも旦那さまは望みを捨てなさらず、大老堀田備中守さまはじめ、老中若年寄の方々を一々お訪ねのうえ、膝詰めのお掛合いをあそばしました――けれどそれも是も」伊十郎は喉へなにか衝上げて来るのを、懸命に抑えながら語を継いだ、
「凡べての御努力が無駄となり、旦那さまには責を負って、今月十二日の巳の刻四つ(午前十時)、……遂に御切腹でございました」
「死ぬことはなかった」外記が呻くような声で云った、「既にいちどお執上げにならぬと決ったものを押返して二度の願いに出たのだ、不首尾は初めから分っていた、死ぬことはなかったのだ、然し余人なら知らず、監物は生きて帰る男ではない、……惜しい事をした」
「惜しい人物を殺しました」
外村重太夫が声を震わせて云った。
みんな粛然と声をのんだ。
梶之助の頭は舞狂う光の渦でいっぱいだった。兄がどんな気持で死んだか、彼には掌の物を見るように理解することが出来る、……兄は努力したのだ、努力したが遂にそれは不首尾に終った。然し兄が自殺したのは不首尾の申訳のためではない、主命の重さを示したのだ。主家の使命を帯びた者がどう身を処すべきか、その唯一の道を示したのだ。