轻松读懂日语经典作品
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やのしのとい
矢押の樋
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,468 字 · 29 页
……そこで外村重太夫は、勘定奉行の責任を以て藩倉の米を開くと触出したが、然しそれより早く、城下近郷十余ヵ村の農民が結束して、正に土地を去ろうとしているという報知が老職たちを驚かした。
――若しそれが事実なら一大事だ。
――他処へ広がらぬ内に取鎮めねばならん。
――然しどうしたら喰止められるか。
国老塩田外記はじめ、全重職が城中黒書院に集って緊急の協議を開いた。……だが事ここに至ってなんの策があろう、今日までに有らゆる手段を尽して来た。唯一つの希望が絶たれたという抜差しならぬ感じが、誰の頭にも重たくのしかかっていたのである。
同じところを堂々巡りするだけで、協議は直に行詰りへ来た。
「事態はさし迫っている、なにか手段はないか」
外記は焦り気味に声を励ました。
「捨置けば大事に成るのだ、然もそれは目睫に迫っている、仕方が無ければ、法を用いて退去する者を縛らせてもよい」
――外記がそう云いながら、手にした扇子を荒々しく置いたとき、
「恐れながら申上げたい事がございます」と矢押梶之助が初めて膝を乗出した。……彼は亡き兄の跡目として協議の席へ出ていたが、自分の発言すべき最も良い機会を掴むためにそれまで黙って待っていたのである。