轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちちぶきこう
知々夫紀行
幸田 露伴
「太陽」博文館、1899(明治32)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,784 字 · 31 页
九日、朝四時というに起き出でて手あらい口そそぎ、高き杉の樹梢などは見えわかぬほど霧深き暁の冷やかなるが中を歩みて、寒月子ともども本社に至り階を上りて片隅に扣ゆ。朝々の定まれる業なるべし、神主禰宜ら十人ばかり皆厳かに装束引きつくろいて祝詞をささぐ。宮柱太しく立てる神殿いと広く潔らなるに、此方より彼方へ二行に点しつらねたる御燈明の奥深く見えたる、祝詞の声のほがらかに澄みて聞えたる、胆にこたえ身に浸みて有りがたく覚えぬ。やがて退り立ちて、ここの御社の階の下の狛犬も狼の形をなせるを見、酒倉の小さからぬを見などして例のところに帰り、朝食をすます。
これよりなお荒川に沿いて上り、雁坂峠を越えて甲斐の笛吹川の水上に出で、川と共に下りて甲斐に入り、甲斐路を帰らんと予ては心の底に思い居けるが、ここにて問い糺せば、甲斐の川浦という村まで八里八町人里もなく、草高くして路もたえだえなりとの事に望を失ない、引返さんと心をきわむ。日本武尊の常陸より甲斐の酒折に至りたまいし時は、いずれの路を取り玉いしやらん。常陸より甲斐に至らんに武蔵よりせんには、荒川に沿いて上ると玉川に沿いて上るとの二路あり。