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ちせいのかいがん

知性の開眼

宮本 百合子

「婦人画報」1939(昭和14)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,229 字 · 8 页

青空文庫

ましてや破れ鏡のような小ざかしさなどものの役にも立ちにくい。

ジョルジュ・サンドの「愛の妖精」(岩波文庫)という小説を愛読したかたは決してすくなくないだろうと思う。プチト・ファデットが自分の特別に荒い境遇を変化させて自分の真情からの愛をも完うしてゆく勤勉で精気にみちた姿は、人生への知性というものは、ああいう風にも現れるという活々としたよろこばしい見本の一つである。

又、近頃堀口大学氏の手で「孤児マリイ」「光ほのか」「マリイの仕事場」と三つの小説が翻訳されたフランスの婦人作家マルグリット・オオドゥウの生活と作品なども、知性というものについて考えさせる多くのものをもっている。

オオドゥウは中部フランスの寒村に生れた孤児であった。育児院で育てられて、十三歳からノロオニュの農家の雇娘で羊飼いをした。巴里へ出てからは十九歳の裁縫女として十二時間労働をし、そのひどい生活からやがて眼を悪くして後、彼女は自家で生計のための仕立ものをしながらその屋根裏の小部屋の抽斗の中にかくして、「ただ自分一人のために」小説をかきだした。それが「孤児マリイ」であった。つづけて「マリイの仕事場」