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いしころ
石ころ
山本 周五郎
「富士」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,450 字 · 23 页
「なるほど、そういう見かたもある」
「しかし弾正を討ったのは事実かれでした、弾正ひとりではありません、わたくしが見ただけでもほかに二人鎧武者を仕止めています、おそらくその二人も、木暮弾正がわたくしの手柄として記されたように、誰かほかの者の手柄として功名帳に記されたことでしょう、そして、……当の多田新蔵はこんども兜首ひとつの手柄も記されずにしまったのです、いったいこれはどういうわけでしょうか」
高天神の城は敵の主将小笠原長忠の降伏によって陥ち、六月十七日に開城した。そして勝頼は岡部丹波守と横田伊松に旗本の士を加えた三千余の兵を駐め、いったん甲斐のくにへと凱旋した。……多田新蔵よりひと足さきに甲府へ帰った万三郎は、なによりもさきに新蔵のふしぎな戦いぶりを父に語ったのである。その座には妹の松尾もいた、かの女は兄の凱旋を祝いに来て、はからずも良人の戦いぶりを聞いたのだった。
「なぜかという、その理由がおまえにわからないのは当然だ」伯耆がしずかに口を切った、「この父も、かつて多田新蔵といっしょに四たび戦場へ出ている、そしておまえの見たとおりの事実をなんどもこの眼で見た」