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いしをくう
石を食う
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 923 字 · 2 页
ところが、その雇人は怠けものであったから、ろくろく鱒に餌をやらないのである。
だから、親鱒は次第に痩せていった。ところで、ただ痩せるばかりでなく、池の鱒は一日ごとに数が減っていくのだ。池の水口には厳重な金網が張ってあるし、畔には跳ね返りをめぐらしてある。決して逃げられるはずがない。だのに、鱒の数は減っていくのだ。
雇人は不思議に思って、ある朝池を覗いたところ驚くべし、一尾の親鱒は自分より少し小さいくらいの親鱒を頭から呑み込み、その胴までを口にして、池の中を泳ぎまわっているのを見たのである。鱒は小さい形のものから、次第次第に大きい形のものの餌になっていたのである。
私は、その頃ちょうど六里ヶ原へ山女魚釣りの旅をしていたので、この話をきいたから、朝早く一匡邑の傍らを通るたびに、その池を覗いたのである。私もついに、大きな鱒が口も割けよとばかり、同類を口にしているのを見た。
鱒科の魚は、腹が空になれば何でも食う。