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いしだんにてっかん
石段に鉄管
小川 未明
「文芸戦線」1924(大正13)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,584 字 · 6 页
ちょうど、母親が、切れかかったぞうりの鼻緒を直していたときです。石段の上から、男が、憎々しげにどなりました。
「ここは、乞食の休み場でない。さあ早く、あっちへいくんだ!」
男は、両手を振って、三人を追いやるような手まねをしました。
二人の子供は、すぐには、起てなかったのです。なぜなら、腰を下ろすとともに、疲れが一時に襲って、小さな足は、重くて、痛かったからでした。母親は、ぞうりをまだ手に持っていました。
「早く、うせんか。ここは、おまえがたの休み場でないぞ!」
男の権幕が怖ろしかったので、三人は石段を離れて歩き出しました。兄は、じっと男の顔を振り向いて見ていました。弟は、石の上にただ腰をかけていることがなんで悪いのか? なんでしかられなければならぬのか? それが、不思議で、不思議でなりませんでした。それで弟は、振り向いて、いままで自分たちが腰をかけていた石段のあたりをながめたのです。石は白く、なんの変化もなく、ぼんやりと乾いた色のままに浮き出ていました。
「お母あ、なんでしかられたんだい。」と、弟は、うつむいて歩いている母親にたずねました。しかし、母親の答えは、子供の耳には聞きとれないほど、口の中でその声はつぶやいたのでした。