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さとうどろぼう

砂糖泥棒

黒島 伝治

1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,108 字 · 9 页

青空文庫

「俺らあ、嚊がまた子供を産んで寝よるし、暇を出されちゃ、困るんじゃがのう。」彼は悄げて哀願的になった。

「早や三人目かい。」杜氏は冷かすような口調だった。

「はア。」

「いつ出来たんだ?」

「今日で丁度、ヒイがあくんよの。」

「ふむ。」

「嚊の産にゃ銭が要るし、今一文無しで仕事にはぐれたら、俺ら、困るんじゃ。それに正月は来よるし、……ひとつお前さんからもう一遍、親方に頼んでみておくれんか。」

杜氏はいや/\ながら主人のところへ行ってみた。主人の云い分は前と同じことだった。

「やっぱり仕様がないわい。」杜氏は帰って来て云った。

「その代り貸越しになっとる二十円は棒引きにして貰うように骨折ってやったぜ。」杜氏は、自分が骨折りもしないのに、ひとかど与助の味方になっているかのようにそう云った。

与助は、一層、困惑したような顔をした。

「われにも覚えがあるこっちゃろうがい!」

杜氏は無遠慮に云った。

与助は、急に胸をわく/\さした。暫らくたって、彼は

「あの、やめるんじゃったら毎月の積金は、戻して貰えるんじゃろうのう?」と云った。

「さあ、それゃどうか分らんぞ。」

「すまんけど、お前から戻して呉れるように話しておくれんか。