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すずりとすみ

硯と墨

中谷 宇吉郎

「座右宝」1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,996 字 · 22 页

青空文庫

この場合粒子の大きさはどうなるかを調べてみると、石の硯も金属の硯も同様に、墨が早くおりる場合には粒子が大きいということがわかった。即ち一定の硯についてみても、粒子の大きさはおりる量に比例するのである。ただし比例係数は金属の場合が三倍近く大きく、従って粒子も石の場合に比較して、いつでも三倍くらい大きくなる。その理由は、金属から極く微量のイオンが水の中に溶け出て、そのイオンが墨の粒子の凝集を起すためだろうと思われる。その意味でも、金属の硯は思わしくないことになる。このことと、石の硯に比して金属の硯は墨のおり方が少ないということとは、矛盾したことではない。

次に硯の水の問題がある。金気のある水がよくないことは、前の説明で既にわかっているが、水が酸性を帯びた時と、アルカリ性を帯びた時とでは、何かちがいが無いかという点も調べておく必要がある。そのために同じ条件で、蒸溜水と苛性加里液と塩酸水溶液とで墨を磨り、その時の墨のおりる量と粒子の大きさとを測ってみた。その結果、酸性の場合は、蒸溜水の場合より粒子が大きくなって、従って墨のおり方がよくなる。アルカリ性の場合は、その反対であって、蒸溜水の場合よりも粒子が小さくなり、おりる量も少なくなることがわかった。