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しゃかいじじょうとかがくてきせいしん
社会事情と科学的精神
石原 純
「科学ペン」1937(昭和12)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,617 字 · 19 页
実際にこの数年間人々はいかにしても堪え難い重圧のもとに沈黙させられねばならなかった。かの喧ましい国体明徴観念の叫びやこれに伴う日本精神発揚の声の盛んであるなかには、何かしら不気味な底流の渦巻いているのは、蔽うべからざる事実である。実際政治の上においては、それが庶政一新の標語の奥に侵入したり、防共協定の影を妖しげに彩ったり、あるいは財政の準戦時体制化として頭を擡げようとしたり、あらゆる事件に伴ってまさに表に浮動しようとする形勢を蔵している。この時にあたって我々はこの底流の実体を明確につきとめ、これを正しく検討批判し、その間において我々に真に必要であるものを採り、しからざるものを打ち摧いて、この暗冥な雰囲気を明朗化することが絶対に必要なのである。これがためには我々は飽くまでも正しい科学的精神をもって対抗し、あらゆる機会を利用して民衆を導くことが大切である。これこそ真に国家を憂えるものの重大な責務ではないであろうか。私はこの意味において田辺、小倉両博士のごときと相通ずる幾百幾千の論説が書かれて、その声を社会に普ねからしめんことを切望して止まないのである。