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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

検挙された或る校長は、皆が今迄習慣的にやって来たことで、大して悪いこととも思わなかったと述懐しているそうだが、案外これは、世間の偽善家達に対する頂門の一針になるかも知れない。小学校の校長さんだから先生だからと云って、何も超人間的な特別な人格者である理由はあるまい。そういう怪物に私の子供などの教育を任せるのだと、私は一寸考えざるを得ない。清廉とか金銭に恬淡だとかいう徳性は良いかも知れないが、師範学校の卒業生が皆清廉で恬淡な人格者でありそうだと仮定しているのは最も不真面目な迷信だろう。道徳はもう少し真面目に、上っ調子でなく、考えられなければならない。

本当に問題になるのは、校長が収賄したとかしないとかいう道徳問題ではなくて、学習書という一種の物質の存在の問題なのである。一体何のために、絶大な権威のある「国定」教科書の外に、そうした準教科書が必要なのかというと、どうも問題は、中等学校入学の問題にからんでいるらしい。男の場合で云えば、官立の高等学校や専門学校へ卒業生が沢山入学するのが良い中学校で、そういう中学校に余計入学させることの出来るのが、良い小学校となっているが、そういう良い小学校を造り出すために、わが学習書の存在理由があるわけで、人類の教育の一手引き受け人である小学校校長が、この学習書のために身を誤っ