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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

と云うのは、関東震災の時に製糸業者を国家が救済したり、神戸の鈴木が潰れた時に台湾銀行を救済したりした、ああいう意味での救済を、農民に対してはとに角、農村に対してやろうというのが「農村問題」だ。だから農村救済は農村の中小地主や中小資本家のために農村金融をしてやることだというようなことになる。無知な農民達は金融と聞くと、金を借りることばかりしか考えないが、そしてこの点に於ては「庶民金融」という掛け声を聞いて好い気持になる都会の庶民(市井人、即ち小市民)も農民と少しも変らないが、併し金融というからには金を貸すことの方が建前だということを考えて見なくてはなるまい。そうすると農村金融というのは農村に金を貸してやることであり、そればかりではなく、農村に金を貸させてやることでもあり、又更に金を貸す能力を農村に授けてやることでもあるのだ。金を借りる方は問題にならぬ、農民は問題ではないからだ。農村の中にあって、或いは農村に対して、金を貸すことの方が農村金融の、従って又「農村問題」の問題なのである。

失業問題が農村問題に変ったのは、貧乏という生活問題が、金融という金儲け問題に変ったことに他ならない。