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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

従業員の方にあるのだ。

山下電気局長はそこで、この整理案によらなければ市電の経営は完全に行きづまり、結局は従業員諸君自身の不為めになるという点を慮って、親心になって整理を断行するのだ、今後は決して整理や減給はしないから、と涙を流して従業員に訴えた。併し東京交通労働を中心とするこの市電従業員達は、この「親心」という奴には余程懲り懲りしていると見えて、言下に之を拒絶して了ったのである。つい一昨年一千三百五十名の整理と一割二分との減給をやったばっかりなのだから、この親心に信用出来ないのは無理からぬことだ。

局長以下二千名の俸給はそのままで、従業員だけが約半額の減給というのだから、誰だってこんな親を本当の親とは思うまい。二千万円も退職手当を出す(場合によっては一人五千円近くにさえなる)のだから、文句は云わぬ方が良かろうと、それに退職手当を勘定に入れると、実は四割五分どころではなく、僅に四分乃至一割九分の減給でしかなく、場合によっては増給にさえなるから、良いではないか、グズグズ云うと退職手当を踏み倒すだけでなく、共済会で出す筈の金も半分ばかり踏み倒すぞ、と市当局はいうのである。