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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

之より先、陸軍は第二次国防充備の五カ年計画のために、明年度以降五カ年総額六億の要求を大蔵省に提出している。ソヴィエト・ロシアに対抗するためには是非之だけは必要で、今日のロシアは日露戦争時代のロシアとは打って変って強くなっているからというのである。尤もこの要求は、この間の思わぬ関西風水害のおかげで政府の総予算の圧縮が必要となったため、明後年度からに延期されることになったが。

風水害が軍縮会議にどう影響するかは、今の処一寸材料がなくて判らないが、とに角軍部にとってこの風水害は色々の間接直接の影響を与えている。云うまでもなく夫は当然なことだ。この風水害は単に関西地方の軍需工業生産能力の数パーセントを一時的に失わせたばかりでなく、旱魃、冷害、水害による凶作に、更にもう一つの決定的な拍車をかけた。それが軍部と何の関係があるかと云うかも知れないが、この凶作を見越した米価の極度の騰貴は、持米を売り払ったり食いつくして了ったりしている全国の貧農民(ブルジョアジーは之を農村というロマンティックな名で呼んでいるが)にとっては、さし当りの連帯的な損害にしかならないわけで、それに繭のレコード的な安値までが手伝って、この頃農民をクシャクシャさせているのだが。