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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
なる程軍部はブルジョアジーや地主や政党政治家よりも、もう少し上手なものの云い方を心得ているという差異はある。例えば、軍需工業労働者に対しては、軍部は「勤労恩賞法」というスローガンで後援している。(勤労心という語はさっきも出て来た。)それから軍事関係の風水害罹災者には軍部は特別な便宜を計ることにもしたそうだ。特に農村に対しては(農民に対してはとに角)、なるべく面倒を見るような方法を考えようとしているのが、軍部の態度だ。だから例えば、全国の農民団体(?)はこの頃軍部の後援を得て「飯米差押一カ年禁止」をスローガンとする運動を始めたがっているそうでその代償としてかどうか知らないが、国防予算の削減には大不賛成だと云っているそうだ。(東京日日新聞はワザワザ之を報道して呉れている。)正に軍部の注文通りの筋書きに出来ているが、天下の実業家・政治家・又特に大中小地主諸氏も、もう少し軍部の様な考え方を習い覚えることが一身上の利益ではないかと思う。軍部とブルジョアジーとの対立(?)、その小さな一例は在満機構改組をめぐる軍司令部と関東庁との対立などだが、こうした内部的な対立などは、それから後でユックリ考えても充分間に合うのである。