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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

ここで産業合理化というのは労働力搾取の高度化ということで、又技術の優秀というのは機械設備が優秀であることではなく労働者の技能の搾取が発達していることだ、ということは今更説明するまでもない常識だが、これはつまり、その次の、日本労働者の特殊な生活の簡易、を条件としているものに他ならない。

その最もいい例は製糸工場紡績工場の女工であって、この日本に特別沢山いて繊維工業の労働力の大半を占めている女工なるものが、正に、他ならぬ農村の、と云って曖昧ならば零細農民の、娘達なのである。女工の募集が人身売買の形を取っていることは周知の通りで、従ってその結果女工の日常生活が買われた身体の生活であることも、寄宿制度その他の形で判る。生理的貞操に直接は関係しないというだけで、酌婦や芸娼妓に較べて根本的な相違のあるものではない。この点女中もそうだし、又独り女に限らず又子供に限らず、一般に今日の労働者乃至失業労働者が皆そうした根本条件の下に立たされている。豈東北の、凶作地方の、農村の、女の子、に限らんやだ。

例を青森県から取ると、県下を去っている年頃の女達七千人の内、芸妓は四〇五、娼妓は八五〇、女給は九四八、酌婦一〇二四、女工は一四二七、それから女中が断然多くて二四三二名である。