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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
に移行したことを示すものであり、それが中等学校の入学試験から段々と高い処にまで及んで、遂に最後に大学の入学試験にまで現われたに過ぎない。こういう意味に於て、最近、試験地獄は、親達の責任に移行しつつあるのである。
従来は、男の子など、父親の社会的地位や職掌からは比較的独立に、子供は子供なりに新しい運命を開拓すべく入学を志望する、という意味が相当に活きていたのに、最近の社会ではそういう新しい未知の運命を開拓するなどということは例外な場合か空想としてしか許されなくなった。受験者たる子供の家庭の家庭的及び社会的条件が、自然と圧倒的に入学希望の内容を決めざるを得ないように、世の中がなって来たのである。重役の息子は重役に、平社員の子は平社員になるように稼業の程度がもう一遍世襲的(?)になって来るように見える、入学試験の責任者が親達へ移行したことの原因はここにあるのである。
社会の表面に現われた秩序が今日のように固定化されて来ると、今までは家庭が社会からの避難所であったと逆に又社会が家庭からの開放だったりしたのが、今度は家庭自身が社会秩序のただの一延長になり、或いは同じことだが、社会全般が云わば家庭主義社会というようなものになって来る。