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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
膨大なと云ってもタカが知れている財政上の理由で、今日の政治家が、あれ程足並みを揃えて、力み返えるとは想像出来まい。対英貿易に都合が悪いとかいう理由も同様で本気で信じることは出来ない。一等尤もな理由は恐らく、不慣れのために実生活で間々不都合なことが生じるという点にあるのだろうと思うが、それにした処が、何か国家の一大事であるかのように、支配階級一同が騒ぎ立てるに足るだけの理由とは受け取り難い。
して見ると、どうも商工省事務当局が、一生懸命で弁解している通り、愛国心や思想善導の問題が根本的な動機になっていると考えないわけに行かなくなる。国民同盟の如きは、この強制法を修正することによって、「国民思想善導に貢献せん」ことを期している。メートルは非愛国的で、思想を悪導するものというのである。――倫理化欲の旺盛なさすがのわが国の為政者も、メートルだけは倫理化出来ないらしい。一メートルを107倍すると地球の象限弧になり、又一メートルを1553164.1で割ると、定温定圧のカドミウム赤色光線の波長となるのだが、カドミウムや地球ほど度し難い不道徳な存在はないのだ。
合理的であることでは、善良なことはないだろう。