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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

観光局のような変態的な紹介機関しか持たなかったわが国が一体いけなかったのである。

だが疑問はいくつも出て来てつきないのだ。対外文化宣揚が目的だそうだと云ったが一体なぜ急に、わが国ではそれ程文化の対外的宣揚が必要になったのか。日本の文化は決してこの数年来、その水準が高まって来てはいない。高まった部分があるとすれば、夫はソヴィエト・ロシアやドイツを通じての社会科学的研究や常識の場面其他一般の自然科学的研究の世界に於てであって、日本固有な文化(もしそういう言葉が必要ならば)の場面に於てではない。まさか「日本社会主義」とか国体科学とか其他其他のものの建設が日本文化の昂揚でもあるまい。歌舞伎や能はキネマや世界音楽に較べれば、相対的に急速に衰退しつつあるし、相撲が再び盛んになって来たと云っても、拳闘や野球に比較したら物の数ではない。そういうわけで、特に急いで対外的に宣揚しなければならない程の内容ある日本文化は出来ていないのが遺憾ながら今日の事実だろう。

寧ろ、盛んになっているのは、愛国家が敢えて宣揚することを好まぬような、アッパッパ映画や東京音頭まがいの街頭小唄位いのものではないか。